枕石漱流

5章 鉄の巻

目次

はじめに/ 地球と鉄/ 現代は鉄器文明/ カイロの発熱原理 生物における鉄の役割 生物における酸素の役割 食餌鉄と吸収 体内貯蔵鉄 鉄の毒性 アスベストの発がん性 献血のすすめ 植物の鉄吸収機構 藻類と鉄/ 参考文献

はじめに

地球を構成する元素で最も多いのが鉄で、地球の総重量の34.6%を占めるといわれています。酸素が2番目に多く30%と推定されています。鉄の巻では、地球と鉄ならびに鉄器文明について簡単に説明し、次いで、生物にとって必須な鉄の役割について化学的な解説を加えてみたいと思います。

地球と鉄

宇宙は137億年前にビッグバンで生まれたと考えられています。ビッグバンで生まれた水素やヘリウムが集まり、恒星(いわゆる星)が誕生しました。星の内部では核融合が始まり、水素やヘリウムから炭素や窒素、酸素、リン、イオウ、銅、鉄などの元素が産生されます。宇宙や星の成り立ち、核融合について詳しく説明することは本書の目的ではありませんので、他の書物に譲りたいと思います。星も私たちと同じように年老いていき、最後に超新星爆発をおこします。この時、核融合で生まれた鉄を含む様々な元素は、塵となって宇宙に飛散します。私たちの太陽は、第三世代の恒星であり、宇宙を漂っていた水素やヘリウムが新たに集まり47億年前に誕生しました。そして、太陽に取込まれなかった鉄や酸素などの元素の塵が太陽の周りに集積して、地球という惑星が46億年前に誕生したと考えられています。

マグマオーシャンに被われていた灼熱の地球が徐々に冷えて、地球に海ができた頃、海水には大量の鉄が2価鉄(Fe2+)として溶けていたと考えられています。海中で単細胞の嫌気性細菌などの生物が誕生し、そのような生物の中から3025億年前頃にシアノバクテリアという光合成を行なう藍色細菌が生れ、酸素を産生するようになりました(色の巻「シアノバクテリア」を参照)。酸素は鉄と結合しやすい性質があるため、海水に溶けていた大量の鉄は、ほとんど全て不溶性の酸化鉄(Fe2O3Fe3O4)となり、海底に沈殿し堆積していきました。これが長い年月をかけて鉄鉱床となり、地球の地殻変動により海底が隆起し、陸地に出現したものが鉄鉱石の鉱山というわけです。太古の地球の大気には酸素は存在せず、海水から鉄がなくなって初めて酸素が海から大気中へ放出されるようになったと考えられています。

地球の内部構造は大きく3つの層、すなわち地核、マントルならびに地殻に分けられます。これらの層は卵に例えられ、地核が卵黄、マントルが卵白、そして地殻が卵殻に相当します(食の巻「鶏卵」を参照してください)。

先に鉄は地球重量の約1/3を占めると書きましたが、多くの鉄は地核部分(外核と内核に分けられます)に存在し、外核には溶融状態の鉄が、内核には固体状態の鉄が存在すると考えられています。特に、外核の溶融状態の鉄は、その対流運動により地球の磁場(地磁気ともよばれています)の形成に関与していると考えられています。地球磁場は太陽風とよばれる太陽から放出される高エネルギー粒子から地球を守っています。北半球や南半球の高緯度地域(6075度付近)で観察される美しいオーロラは、地球磁場と太陽風により発生する自然現象です。太陽の活動が活発な時には、北海道でもオーロラが見られるようで(低緯度オーロラとよばれています)、2015年には3回も観測されました。地球磁場は逆転すること(N極とS極が入れ替わること)があり、最近360万年の間に11回も起こっているといわれています。このように、地核に存在する鉄は、磁場を形成して太陽風から地球を守り、また、オーロラの発生にも間接的に関与しているのです。

卵の殻に相当する地殻は550 km程度と薄く、この部分に含まれている鉄の含有量は5%程度と推定されています。鉄鉱石の鉱山は、この地殻部分に含まれています。オーストラリア西部のハマースレイ地方には、厚さが1,500 mにも達する縞状鉄鉱層が南北200 km、東西500 kmに広がっており、露天掘りにより鉄鉱石が採掘されています。日本で使われる鉄鉱石は、ほぼ100%輸入に頼っており、2015年の総輸入量の約55%がオーストラリアから輸入されました。

現代は鉄器文明

鉄は現代社会においてなくてはならない重要な金属であり、現在生産されている金属の95%以上を占めています。鉄道の線路や列車、船舶、ビルディング、橋などの町造りから、冷蔵庫、洗濯機、ストーブなどの家庭用品にいたるまで、鉄は私たちの生活に深く関わっており、現代はまさに鉄器文明の時代といえます。紀元前4,000年頃に人類史上初めて鉄器文明を築き、現在のトルコのアナトリア平原にヒッタイトという大帝国が栄えました。初期の頃は隕鉄(鉄隕石のこと)を用いて鉄器を作っていたようです。隕鉄は太陽系の火星と木星との間の小惑星帯から飛来した、まさに宇宙からの贈り物です。 

鉄は自然界では赤鉄鉱(Fe2O3)や磁鉄鉱(Fe3O4)などの酸化物(鉄鉱石)として存在しています。製錬とは酸化鉄を還元し金属鉄を得る作業のことで、溶鉱炉で次の過程で行われます。

1)コークス(炭素C)を燃やして(酸素O2を使う)一酸化炭素(CO)を生成する

2C + O2 → 2CO

2)一酸化炭素で鉄鉱石を還元して銑鉄を得る

Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2

Fe3O4 + 4CO → 3Fe + 4CO2

銑鉄は4%程度の炭素を含み、硬くて脆いので、これを転炉に入れて酸素を吹き込み、炭素含量を減らすと鋼ができあがります。そしてこの鋼(金属鉄)から色々な鉄製品ができるのです。

鉄器(鉄斧など)は水田稲作とほぼ同じ時期、縄文時代晩期の紀元前4世紀頃に大陸から日本に渡来したといわれています。鉄器を製造する技術は、最初の時期は板状の鉄素材である鉄鋌(テッテイ)を大陸から輸入し、鉄器に加工するいわゆる鍛冶(カジ)が伝えられました。続いて、鉄鉱石を還元して金属鉄を得る製錬が行われるようになったのは5世紀の後半であろうと考えられています。日本の製鉄は鉄鉱石ではなく、砂鉄(主として磁鉄鉱)を使用したタタラ製鉄法として発展していきました。タタラとは踏みフイゴを指します。

鉄は空気中の酸素と反応して酸化され、錆びる(錆鉄Fe2O3になる)という性質があります。自動車のボディーを深く傷つけて、そのまま放っておくと、すぐに錆がでてきたのを経験した方は少なくないと思います。これは鉄のこのような性質によるものですから、車の傷は速やかに塗装し直して、空気との接触を遮断する必要があります。

ベンガラ(写真5-1)は赤鉄鉱(Fe2O3)のことであり、きれいな赤色を呈していることから、古くから顔料や塗料として使われ、縄文時代の遺跡からはベンガラを使った木胎漆器や土器が発見されています。最近では、この酸化鉄は医薬品の安定化剤あるいは着色剤として汎用されており、また、化粧品成分としても使われています。

 

写真5-1 青森県今別町赤根沢の赤岩(ベンガラ)(県の天然記念物)

カイロの発熱原理

使い捨てカイロ(懐炉)は、寒い時に手軽に暖をとることができる優れものです。実は、カイロの原材料の半分以上が鉄で、発熱の主役です。ここでは、カイロの発熱原理について説明してみたいと思います。カイロの原材料には、鉄粉(2価の純鉄です)、水、塩類、バーミキュライト、活性炭が使われており、これらは空気の透過量を調節する特殊な不織布(フショクフ)の袋に入れられています。さらにカイロは、空気の侵入を遮断する特殊フィルムの外装で密封されています。鉄は空気中の酸素と反応して、鉄錆を生じ発熱します。この時水が存在すると、鉄は水酸化第二鉄Fe(OH)3に酸化されると考えられています。カイロ内の鉄の酸化反応式は次のようになります。

Fe + 3/4O2 + 3/2H2O Fe(OH)3 + 96 kcal/mol

カイロは使用前に酸素と反応すると使いものにならなくなるので、空気を透過しない特殊フィルムの袋に入れられています。使用時にカイロを外装から取り出すと、酸素による酸化反応がスタートします。カイロの原材料の活性炭は空気を取込み、酸素の供給を促します。塩類は鉄の酸化を早め、水は鉄が錆びるのを早めます。バーミキュライトは表面の小さな穴に水分を取込み、鉄が水でベチョベチョにならないように保水剤としての役割を果たしています。

カイロは発熱すると、最高温度は約63℃に達し、平均温度は約53℃が得られ、40℃以上を保持・持続する時間は1012時間であると謳われています。カイロはかなり高温になるので、肌に直接貼ったり、同じところに長時間使用したりすると、低温やけどを起こす危険性があります。使用に関しては十分な注意が必要です。

生物における鉄の役割

鉄は生物にとって必須の元素です。哺乳類や鳥類、爬虫類、魚類などの動物において、鉄は赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビンの構成成分であるヘム(プロトポルフィリンに鉄が結合したもの)として存在します。色の巻「動物の血液の色」ならびに動物の筋肉の色」、あるいは食の巻「マッコウクジラ」の項目において、ヘモグロビンならびにミオグロビンのヘムは酸素を結合する性質があり、ヘモグロビンは酸素を輸送し、ミオグロビンは酸素を貯蔵する働きがあることを説明しました。ここでは、ヘモグロビンについてもう少し詳しく解説したいと思います。

鉄は遷移元素の仲間であり、ヘモグロビンのヘム鉄には2価鉄(Fe2+)と3価鉄(Fe3+)の状態があります。ヘモグロビンが酸素を結合できるのは2価鉄の状態のときです。肺でヘモグロビンに結合した酸素の一部が、筋肉や脳、肝臓などの末梢組織でヘモグロビンから遊離する際に、2価鉄(Fe2+)から電子を奪いスーパーオキシド(O2-)という活性酸素に変身することが分かっています。活性酸素は赤血球を傷つけるので、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やグルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素の働きによりスーパーオキシドは無害な水に変換されます。SODは赤血球に沢山含まれており、最初にこの酵素が分離精製されたのは赤血球からです。つまり、赤血球では絶えず相当量の活性酸素スーパーオキシドが生成されて赤血球が酸化ストレスに曝される危険があるため、万全な抗酸化システムが備わっているというわけです。

一方、酸素に電子を奪われたヘム鉄は3価鉄(Fe3+)の状態になりますが、そのような状態のヘモグロビンをメトヘモグロビンとよびます。メトヘモグロビンは酸素を結合できないので、メトヘモグロビンレダクターゼという還元酵素により3価鉄を還元して2価鉄の状態にもどす機構が赤血球には備わっています。

赤血球は骨髄というところで作られ、血液中に出てきます。赤血球には一定の寿命があり、老化した赤血球は脾臓などに取込まれて分解されます。赤血球の寿命はヒトでは120日くらいですが、ウシで130日、ウマで140日くらいと比較的長く、逆にイヌで100日、ネコで70日くらいと比較的短いことが知られており、動物により異なります。赤血球が分解されると、その中に含まれているヘモグロビンも分解され、ヘムがグロビンから遊離します。ヘムはヘムオキシゲナーゼという酵素によりビリベルジン、一酸化炭素、鉄に分解されます。ビリベルジンは還元されてビリルビンになり、脾臓から血液を介して肝臓に取込まれます。肝臓でビリルビンはグルクロン酸と結合し(これをグルクロン酸抱合といいます)、胆汁として排泄されます。肝臓の機能が障害されると、血中ビリルビン濃度が高まり、眼球結膜や皮膚などにビリルビンが沈着し、いわゆる「黄疸」が発症します。

ヘモグロビンやミオグロビンの他に、鉄は多くの酸化還元酵素の補因子や電子伝達を行なうシトクロムのヘムなどとして重要な働きを担っています。例えば、コラーゲンを構成するプロリンやリシンというアミノ酸がビタミンC存在下で酵素的にヒドロキシ化されてヒドロキシプロリンやヒドロキシリシンになることにより、水に不溶性で強度の高いコラーゲン繊維が合成されることを食の巻「ビタミンCと壊血病」のところで説明しましたが、これにはプロリンヒドロキシラーゼとリシンヒドロキシラーゼという非へム鉄を含む酵素が関与します。非へム鉄とはヘム以外の状態でタンパク質に結合している鉄のことです。これらの酵素によるヒドロキシ化反応において、酵素に結合している2価鉄は3価鉄の状態となり、酵素は活性がなくなります。これはヘモグロビンがメトヘモグロビンになると酸素結合能がなくなるのと似ています。そこで、これらのヒドロキシラーゼの3価鉄はビタミンCにより還元されて2価鉄にもどり、酵素活性が回復するのです。ビタミンCが欠乏するとヒドロキシラーゼの鉄を還元することができないため丈夫なコラーゲンを作ることができず、壊血病になるわけです。

核酸にはDNARNAがありますが、両者の違いの1つに構成糖の違いがあります。DNAにはデオキシリボースが、RNAにはリボースが含まれており、DNAの合成にはリボヌクレオシド二リン酸をデオキシリボヌクレオシド二リン酸に変換するリボヌクレオチドレダクターゼという酵素が必要です。この酵素には非へム鉄が結合しており、リボヌクレオシド二リン酸のリボースをデオキシリボースに還元するのに関与しています。

私たちの血液中には、体内に侵入してくる細菌を食べてくれる好中球という白血球が存在しています。好中球はヘム鉄を含むNADPHオキシダーゼとミエロペルオキシダーゼという酵素をもっており、次亜塩素酸(HClO)を生成して取込んだ細菌を殺します。次亜塩素酸のナトリウム塩(NaClO)は、家庭用塩素系漂白殺菌剤に使用されています。次亜塩素酸のような殺菌作用のある物質が私たちの体内で合成されて、細菌の攻撃から身体を守ってくれていることに非常に驚かされます。

ヘム鉄を含む各種シトクロムは、例えば、細胞内のミトコンドリアという細胞小器官の膜に存在して電子伝達の働きをしており、クジラやラクダのところでお話しした代謝水の生成に関与したり、細胞のエネルギー物質であるアデノシン5’-三リン酸(ATP)の生成に関与したりしています。また、小胞体という細胞小器官に存在するシトクロムP450というヘム酵素は、薬物や異物の代謝に関与しています。

生物における酸素の役割

原始地球の大気には酸素(酸素原子ではなく気体の酸素分子O2のことです)はなく、最初に誕生した生物は嫌気性生物だったと考えられています。その後、光合成を行なうシアノバクテリアが出現し、地球は酸素の惑星に生まれ変わりました(色の巻「シアノバクテリア」を参照)。海にも大気にも酸素が満ちあふれ、酸素を利用する好気性生物が誕生しました。大気中の酸素に太陽の紫外線が作用してオゾン層ができ、地上に降り注ぐ紫外線の量が減ると(オゾン層については、色の巻「紫外線と赤外線」を参照してください)、生物は陸に進出して大きく進化しました。現在、地球の酸素のほとんどは、植物や海藻、植物プランクトンの光合成により供給されています。

光合成により、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)から、糖質と酸素(O2)が生成されます。生成される糖質については、食の巻「光合成産物の行方」に記載しましたので参照してください。グルコースやフルクトースなどの単糖の一般式はCnH2nOnで表されます。糖質の炭素Cは二酸化炭素に由来し、もう一つの生成物である酸素は水に由来します。

私たちは酸素無しでは生きることができません。それでは酸素は、どのように私たちの身体の中で役立っているのでしょうか。体内に取込まれる酸素の約97%は、前述した細胞内のミトコンドリアで利用され、難しい言葉で「酸化的リン酸化」という方法でATPを生成しています。この時に酸素から代謝水が生成します。光合成により水から生成された酸素は、好気性生物である私たちの体内で水にもどるわけです。ATPは、細胞が利用できるエネルギー通貨とよばれ、骨格筋や心筋、平滑筋(消化管や血管、膀胱、子宮などに存在)の筋肉運動や脳の活動、細胞内の様々な代謝に利用されています。酸素の供給が絶たれる(これを窒息とよびます)と、生物はATP不足に陥り、生きていけなくなります。毒物の青酸カリは酸化的リン酸化によるATP合成を阻害するので、死を招くのです。

体内に取込まれる酸素の残り約3%は、各種オキシゲナーゼやオキシダーゼなどの酵素による代謝に利用されます。例えば、前述したコラーゲンのプロリンやリシンというアミノ酸残基のヒドロキシ化や好中球による次亜塩素酸の生成、あるいは、チロシンというアミノ酸からドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の生成、コレステロールの生成、アミノ酸オキシダーゼによるアミノ酸の代謝、キサンチンオキシダーゼによる核酸のプリン塩基(アデニンとグアニン)の代謝などです。ただし、アミノ酸オキシダーゼとキサンチンオキシダーゼの反応では活性酸素のスーパーオキシド(O2-)や過酸化水素(H2O2)が生成されます。

食餌鉄と吸収

鉄は私たちの体内に34 g程度しか存在しない微量元素であり、日々の食事でしっかり鉄分を摂取することが大切です。鉄分の多い食品は、家畜の肉や赤身の魚、貝類が知られています。肉類や鉄分の多い魚介類の可食部100 g当たりの鉄含量を表5-1に示します。家畜の肉類では、ミオグロビン含量が多い肉、つまり赤味が強い肉ほど、鉄が多く含まれていることが分かります。スーパーやお肉屋さんなどで馬肉、牛肉、羊肉、豚肉、鶏肉の色調を比べてみると面白いですよ。同じ家畜の赤肉でも、肩肉やもも肉など部位により鉄含量が異なります。マグロ類は、キハダマグロやメバチマグロなど種類により鉄含量が異なります。肉類や魚介類以外では、レバー(肝臓)、海藻、小松菜やほうれん草、水菜などの野菜類、小豆や大豆、インゲン豆、エンドウなどの豆類にも多くの鉄が含まれています。肝臓は動物の鉄貯蔵臓器であり、フェリチン鉄(非ヘム鉄)を多く含んでいます(後述する「体内貯蔵鉄」を参照してください)。

海藻のヒジキには鉄分が多いと昔からいわれています(干しヒジキ100 g当たりの鉄含量: 58.2 mg)。これは色の巻「海藻の色」のところで述べたように、生のヒジキの苦みや渋みを抜くために鉄釜で34時間茹でる間に、釜から溶け出た鉄がヒジキに吸着するためである考えられます。しかしながら、最近はステンレス釜で茹でるようになったため、ヒジキの鉄含量は非常に少なくなったと報じられています(干しヒジキ100 g当たりの鉄含量: 6.2 mg)。

食物に含まれている鉄のすべてが腸から吸収されるわけではなく、鉄の吸収率は食物により異なります。肉類の鉄の多くはミオグロビンのヘム鉄として存在しており、吸収率は20%を超えますが、一方、野菜類や豆類の多くの鉄は非ヘム鉄の形で存在しており、吸収率は14%と低いことが知られています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、一日当たりの鉄推奨量は、成人男性で7.07.5 mg、成人女性で10.5 mgとなっています。ただし、1017歳の育ち盛りの時期には、これより34 mg程度多く摂取することが推奨されています。

食餌鉄は動物の十二指腸から吸収されることが分かっています。十二指腸の粘膜上皮細胞にはヘム輸送タンパク質と2価金属輸送体が存在し、前者はヘム鉄を、後者は非ヘム鉄をそれぞれ腸の管腔側から上皮細胞側に取り込む役割を担っていると考えられています。食餌中の非ヘム鉄の多くは3価鉄(Fe3+)であり、腸粘膜表面で2価鉄(Fe+)に還元されてから吸収されます。レモンなどに含まれるビタミンC(アスコルビン酸)は非ヘム鉄を還元して鉄吸収を促進しますが、植物に含まれているフィチン酸は鉄と結合して、吸収を阻害することが知られています。

表5-1 肉類・魚介類の可食部100 g当たりの鉄含量

体内貯蔵鉄

体内の鉄はヘモグロビンやミオグロビン、鉄酵素、シトクロムなどの構成成分(これを機能鉄といいます)として存在する以外に、肝臓や脾臓、骨髄などにおいてフェリチンやヘモジデリン内に貯蔵鉄として、血液中のトランスフェリンに結合した輸送鉄として、ならびにタンパク質に結合していない遊離鉄(フリー鉄)として存在しています。遊離鉄に関しては後述する「鉄の毒性」を参照してください。フェリチンは分子量が約500,000の大きな球状タンパク質であり、中心部分に2,0003,000個の3価鉄を貯蔵することができます。ヘモジデリンはフェリチンが細胞内で代謝されて生ずると考えられています。

ヒトの体内には、通常、男性で600900 mg程度、女性で200300 mg程度の貯蔵鉄があり、ヘモグロビンなどの合成に必要な機能鉄は十分に賄われています。しかしながら、食餌からの鉄分の供給が不足したりすると貯蔵鉄がなくなって鉄欠乏状態に陥り、十分なヘモグロビンの合成ができなくなるため「貧血」を引き起こします。これを鉄欠乏性貧血といいます。貧血の基準は、血中ヘモグロビン濃度により、男性で13 g/dl未満、女性で12 g/dl未満とされています。成人女性は月経や妊娠・出産により鉄欠乏に陥りやすく、厚生労働省の「平成27年国民健康・栄養調査報告」(平成293月発表)によると、2059歳までの女性では貧血の割合が約18%に上っています。一方、同じ年齢幅の男性では貧血は約2%と低いレベルに落ちついています。

貧血には上述した鉄欠乏性貧血以外に、関節リウマチや感染症、炎症性疾患、悪性腫瘍などに伴う貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、サラセミアなどがあります。

体内貯蔵鉄が異常に多くなることを鉄過剰とよびます。これには遺伝性のものと続発性のものがあります。前者は遺伝性ヘモクロマトーシスといわれ、遺伝子欠陥により鉄の過剰を感知して鉄の吸収を抑制するという調節機能がうまく働かず、鉄がどんどん吸収されて多量の鉄が体内に蓄積されます。後者は鉄剤(経口鉄剤と静注鉄剤)の誤用や反復輸血、アルコールの多飲、鉄の多い食品(サプリメントを含む)や食器からの鉄分の過剰摂取などにより、体内に過剰な鉄が蓄積されます。鉄過剰状態になると、肝臓や心臓、膵臓などに鉄が沈着して、肝硬変や肝癌、心不全、膵内分泌障害による糖尿病などにつながる場合があります。そこで、前述した厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、鉄の過剰摂取による健康障害の回避を目的として、一日当たりの耐容上限量が定められており、成人男性で50 mg、成人女性で40 mgとなっています。

鉄の毒性

「生物における鉄の役割」で述べたように、鉄は私たちの体になくてはならないものですが、体の中の鉄が多過ぎても、前述のように病気になることが分かってきました。南アフリカのバンツー族という民族は、鉄の容器でビールを造り、これを大量に飲む習慣があるようですが、ビールに溶け出した鉄を大量に摂取することになり、肝臓などに鉄が蓄積し、肝硬変などの重い病気になることが知られています。また、ヒトにおける鉄と病気の関係の疫学調査から、①献血を繰り返すことにより貯蔵鉄が減少すると発癌の割合が減少すること、②貯蔵鉄が増大するほど発癌のリスクが高まること、③アルコール性肝硬変の患者さんにおいて肝臓貯蔵鉄は死の予見因子となること(つまり、病院への入院時の肝臓貯蔵鉄が多い患者さんほど余命が短い)、④健康な女性において貯蔵鉄が増大すると2型糖尿病のリスクが高まることなどが報告されています。

それではなぜ鉄が多すぎると体に種々の障害が生じてくるのでしょうか。詳細な説明は省きますが、それは上述したヘモグロビンやミオグロビン、酵素、シトクロム、フェリチン、トランスフェリンなどのタンパク質に結合している鉄は生体にほとんど害を及ぼさないのですが、タンパク質に結合していない遊離鉄は、活性酸素の生成を触媒し、酸化ストレスを引き起こすからです。遊離2価鉄Fe2+はフェントン反応

Fe2+ + H2O2 Fe3+ + OH- + OH

により、非常に強力な活性酸素であるヒドロキシルラジカル(OH)を生成し、ヒドロキシルラジカルはDNAの損傷や脂質の過酸化などの酸化ストレスを引き起こします。もちろん生体には様々な抗酸化システムが備わっており(一部は「生物における鉄の役割」のヘモグロビンのところで説明しました)、酸化ストレスから防御されています。しかしながら、鉄過剰状態になると、フェントン反応に関与する遊離2価鉄が増加して酸化ストレスが増幅され、体に障害が現れてくるのです。

このように鉄は、生物が生きていく上で必要不可欠な元素ですが、一方で、生物にとり様々な障害の原因ともなるため「諸刃の剣」なのです。同じように、酸素も生物にとっては「諸刃の剣」ということができます。

アスベストの発がん性

アスベストは天然に存在する繊維状ケイ酸塩鉱物で石綿ともよばれています。アスベストは防音性、吸着性、断熱性、耐火性、耐摩耗性、耐腐食性などに優れているため、1910年代から建築資材として吹付け剤や断熱材、保温材、内装材、外装材、屋根剤、煙突剤などに使用されてきました。

アスベストを吸入すると、肺の中に長期間残留するため、肺がんや悪性中皮腫、アスベスト肺(肺が線維化する塵肺の1つ)などの原因になることが明らかにされています。また、アスベストによる健康被害は、アスベストに含まれている鉄が一因であろうといわれています。アスベストには青石綿(クロシドライト)、茶石綿(アモサイト)、白石綿(クリソタイル)などがあり、鉄含量は、青石綿や茶石綿が約28%、白石綿が約1%です。疫学的に青石綿や茶石綿は発がん性が高いと報告されています。1995年に青石綿と茶石綿の使用が禁止され、2004年に白石綿の使用も禁止されました。アスベストを扱う工場の労働者のみならず、その家族や工場の近隣住民にも健康被害が明らかになっています。今後、建物の劣化、解体・改修などによりアスベストが飛散し、健康被害が拡大することが非常に危惧されています。

献血のすすめ

献血は現在、全血献血の場合16歳以上69歳まで行なうことができます。ただし、男性は45 kg以上、女性は40 kg以上の体重がないと献血はできません。また、ヘモグロビン濃度は、200 mlの全血献血の場合には男性が12.5 g/dl以上、女性が12.0 g/dl以上、400 mlの全血献血の場合には男性が13.0 g/dl以上、女性が12.5 g/dl以上であることが献血(採血)基準になっています。最近、献血する若い世代の人が少なくなっており、日本赤十字社は苦労しているようです。聞くところによると、献血針を刺されるのが怖いという理由で、若い人は献血に二の足を踏んでいるようです。最近の献血針は蚊に刺される程度で、ほとんど痛みを感じないので、是非安心して献血に協力してあげてください。

献血をすると血液検査が行なわれ、一週間後くらいに、血液学的検査(赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビンなど)や血清生化学的検査(血清酵素を用いた肝臓機能検査、アルブミン、グリコアルブミン、コレステロールなど)の結果を親展で知らせてもらえるので、健康管理に役立てることができます。グリコアルブミンは糖尿病の早期発見に役立ちます。また、献血血液を輸血する際に、患者さんへの万が一の感染を防ぐために、B型やC型肝炎ウイルス検査、ヒトT細胞白血病ウイルス-1型検査、梅毒トレポネーマ検査なども行なわれており、異常が認められた場合、通知を希望すれば親展で知らせてもらえます。著者は20代から献血を始め、還暦を過ぎても年に一度は献血を続けています。

献血により体から血液を抜いてもらうと、ヘモグロビンとともに鉄が体内から失われます。ヘモグロビン濃度14 g/dlの人が400 mlの全血献血をすると、約200 mgの鉄を体から除くことができます。献血後、体はヘモグロビンを合成して赤血球を補おうとするため、貯蔵鉄が利用されて少なくなり、鉄の毒性が弱まります。このようにして、献血は鉄の毒性から身体を守るため、つまり自分の健康のためにも役立てることができるのです。是非、近くの日本赤十字献血ルームあるいは献血バスで献血をしましょう。

植物の鉄吸収機構

植物が生長するためには、窒素、リン、カリウムという三大栄養素とともに、カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、ケイ素などが必要で、これらは植物の根から吸収されます。鉄はクロロフィルの合成、葉緑体における光合成の電子伝達系、ミトコンドリアにおける電子伝達系などにおいて重要な役割を担っています。ここでは、植物の鉄吸収機構について簡単に説明したいと思います。

「地球と鉄」のところで述べたように、地殻には多くの鉄(約5%)が含まれています。もちろん植物を育む土壌にも豊富な鉄が含まれていますが、そのほとんどは植物が直接利用できない不溶性の3価鉄(Fe3+)の状態で存在しています。植物は長い進化の過程で、土壌から鉄を吸収する2つの戦略、すなわち「還元戦略」と「キレート戦略」を獲得しました。還元戦略はイネ科植物以外に見られ、キレート戦略はイネ科植物に見られます。ただし、稲はキレート戦略と還元戦略の両方を持つようです。

還元戦略では、①根から分泌された水素イオン(H+)により根の周囲の土壌が酸性化されて、不溶性の3価鉄が可溶化され、②鉄は根から分泌されたフェノール性酸(例えば、プロトカテク酸など)に結合し、③フェノール性酸に結合した3価鉄は、根に存在する酵素により還元されて2価鉄(Fe2+)になり、④2価鉄はフェノール性酸から解離して、2価鉄輸送体により土壌から根に吸収されます。

キレート戦略では、①根からムギネ酸類が分泌され、②不溶性の3価鉄をキレート結合して可溶化し、③3価鉄-ムギネ酸類錯体は、錯体輸送体により土壌から根に吸収されます。ムギネ酸は日本の農学者高城成一により1976年に大麦の根から分泌される鉄溶解性物質として発見されました。ムギネ酸にはデオキシムギネ酸やムギネ酸、ヒドロキシムギネ酸など9種類ほどあるので、ムギネ酸類とよばれています。

藻類と鉄

海の生態系の底辺をなしているのは単細胞藻類(微細藻類ともよばれます)の植物プランクトンや多細胞藻類の海藻です。植物プランクトンは動物プランクトンや二枚貝(アサリやハマグリ、カキなど)の餌となります。魚は動物プランクトンを食べて成長する一方、自身はアザラシやクジラなどの海棲哺乳類の餌となります。プランクトンとは遊泳能力が低く、水の流れに身をまかせて、水中を浮遊する生物のことです。植物プランクトンには珪藻や渦鞭毛藻、円石藻などがあり、光合成により増殖します。

珪藻は、細胞がガラス(二酸化ケイ素SiO2)の殻で被われています。死んだ珪藻の殻の堆積物からできた珪藻土は、七輪、コンロ、耐火断熱レンガ、ビールや日本酒の濾過剤などの原料として利用されています。ノーベル賞の設置者アルフレッド・ノーベルが発明した最初のダイナマイトは、ニトログリセリンを珪藻土にしみ込ませて作られました。

有毒渦鞭毛藻を食べた貝類が有毒化することは、食の巻「貝毒」に記載しましたので参照してください。渦鞭毛藻の一種である褐虫藻はサンゴ(刺胞動物の一種)の体内に共生し、サンゴから栄養素の供給を受ける一方、光合成産物をサンゴに提供しています。サンゴは炭酸カルシウムCaCO3を主成分とする骨格を有しており、サンゴ礁を形成します。サンゴの美しい色は褐虫藻の色素を反映していますが、海水温が30℃を超えると、褐虫藻がサンゴから離脱するため、サンゴは白化し、死滅してしまいます。地球温暖化に伴う海水温の上昇によるサンゴの白化が懸念されています。

円石藻は、細胞の周りが円石(ココリス)とよばれる炭酸カルシウムの殻で被われています。円石藻が大量に繁茂し、その遺骸が海底に沈降・堆積すると石灰岩が形成されますが、白亜紀に形成されたイギリスの「ドーバーの白い崖」やフランスの「エトルタの白い崖」(クロード・モネの絵に描かれています)は、そのような円石藻のココリスからなる石灰岩として有名です。円石藻は二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムに固定するため、地球規模の炭素循環に大きく関わっています。

海藻には植物の根のように土壌から養分を吸収するような根ではなく、仮根とよばれる付着器官があり、光が届く100 mより浅い沿岸海域の岩場にくっついて固着生活をしています。海藻は、根ではなく葉から直接海水中の栄養素を吸収して、光合成により生長します。海藻にはコンブやワカメ、アラメ、カジメ、ヒロメ、ホンダワラなどがあり、これらはウニやアワビ、サザエなどの餌となっています。コンブの仲間のオオウキモはジャイアントケルプの別名があり、全長が数十メートルに達し、「ケルプの森」を形成することはよく知られています。

さて、植物プランクトンや海藻が増殖し育つためには、植物と同じように窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、ケイ素などが必要です。これらの元素のうち、カリウムやカルシウム、マグネシウム、イオウは、海水に豊富に存在していますが(水の巻「淡水・汽水・海水」を参照)、その他の元素は十分ではありません。窒素やリン、ケイ素は硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩などの栄養塩として陸地から河川などにより海に供給されています。また、植物プランクトンや動物プランクトン、海藻、魚介類などの死骸が海水中でバクテリアにより分解されることにより、栄養塩は再生産されリサイクルされます。

鉄は陸地には豊富に存在していますが、海水中にはごく微量(10500 ng/l)しか含まれていません。なお、河川水に含まれている鉄の濃度は40600 μg/l で、海水より1,000倍ほど多く含まれています。ここで、ng10-9g、μg10-6gのことです(「表1-1 単位の接頭辞」を参照)。植物プランクトンや海藻に必要な鉄の陸から海への供給ルートは、主として河川と大気です。

河川では、鉄は森林や湿地などの腐植質(フミン質あるいは腐植物質ともよばれます)のフルボ酸と結合した可溶性の状態(フルボ酸鉄)あるいは水酸化鉄などの不溶性の懸濁した状態で海に運ばれると考えられています。フルボ酸とは、土壌中で動植物の遺体が微生物により分解されてできた有機物である腐植質のうち酸により沈殿しない成分で、カルボキシ基(-COOH)を多く含むため鉄を結合することができます。

鉄を含む陸地の砂塵は、風により大気中に舞い上げられ、海洋に運ばれます。大陸から海洋へ大気により輸送される砂塵としては、アジア大陸の乾燥地域(タクラマカン砂漠やゴビ砂漠、黄土高原など)から北太平洋への「黄砂」やアフリカ大陸のサハラ砂漠から北大西洋への「サハラ砂塵」がよく知られています。大気由来の鉄は、海洋の植物プランクトンやバクテリアなどが産生・分泌する有機配位子とよばれる物質に結合され、有機鉄錯体が形成されると考えられています。

このようにして、海洋の植物プランクトンは河川により運ばれるフルボ酸鉄や海洋で形成される有機鉄錯体を利用して増殖すると考えられます。海藻は主として河川由来のフルボ酸鉄を利用して、河口域あるいは沿岸海域で生育します。栄養塩と同様に、鉄も海の生物の死骸などの分解により一部はリサイクルされますが、大部分は海水に不溶性な粒状鉄(3価の水酸化鉄など)となり沈降・除去されるようです。

「森は海の恋人」といわれています。これは、森の木々の落ち葉などからできる腐植土の栄養塩やフルボ酸鉄が、雨水に溶けて河川から海に供給され、植物プランクトンや海藻を育て、さらに、魚介類を養うからです。腐植土は森の保水性にも寄与しており、洪水調整にも役立っています。沿岸海域のコンブやワカメなどの海藻が消滅する現象を「磯焼け」といいますが、そのような磯焼けの岩石や岩盤には石灰藻という石灰質(炭酸カルシウム)を沈着する海藻が繁茂して、真っ白になることがあるそうです。磯焼けの原因は山から森林が消えて保水力がなくなり、河川の水量が減ったこと、ならびに河川から供給される腐植質が減ったことが一因といわれています。腐植質は石灰藻の胞子の生長を阻害することが明らかにされています。腐植質を十分に含んだ河川水が海に供給されれば、コンブやワカメなどの海藻が生育し、磯焼けを防ぐことができると考えられており、日本各地で海を育てるために植林が盛んに行なわれています。

世界の海には栄養塩が豊富にあるにもかかわらず、植物プランクトンのクロロフィルが少ない海域があり、これをHNLChigh nutrient low chlorophyll)海域とよんでいます。東部太平洋赤道域や北太平洋亜寒帯域、南極海などがHNLC海域に当たるそうです。栄養塩があるのに植物プランクトンが増殖できない理由は、海水への鉄の供給が不足していることによると考えられています。この考えはHNLC海域への鉄散布実験により植物プランクトンの増殖がみられたことにより確認されています。このように海水の鉄は植物プランクトンの増殖の鍵を握っているのです。

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