枕石漱流

食べ物の歴史と化学

食べ物の歴史と化学

for humans

渡辺清隆 著


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青森県尻屋崎の寒立馬と

まえがき

 人類の祖先はアフリカ大地溝帯で誕生し、狩猟採集生活を続けながら猿人から原人(ジャワ原人や北京原人は原人の仲間です)を経て、現生人類ホモ・サピエンスに進化したと考えられています。最終氷期が終焉を迎えた11,000年前頃から、現生人類は狩猟採集から農耕の時代に移ったといわれています。その頃には人類は南極大陸を除くほとんどの大陸に移動して定住し、様々な農業を始め、様々な食文化の花を咲かせるようになりました。

 現代の私たちが日常食べる物(食材)は、穀物、野菜、果物、海藻、魚介類、家畜の肉やミルク、卵、蜂蜜など広範囲にわたります。現代ほど食材が豊富で、多種多様な料理や菓子などを食べることができる時代は人類史上かつてなかったと思われます。しかしながら、食生活が豊かになるにしたがい、食に起因する肥満や糖尿病など現代人の健康を害する問題が生じてきています。

 現在の飽食の時代だからこそ、未来の健康で豊かな食生活につなげるために、本書では今一度食べ物の歴史を振り返り、その成分を化学的見地から見直してみたいと思います。日本においては、奈良時代に成立した最古の歴史書である「古事記」や最古の和歌集である「万葉集」をはじめ多くの書物に食べ物の記載がありますので、本書ではそれらの紹介に努めました。日本の古くからの食文化に触れながら本書を読み進んで頂けたら幸いです。さらに、食べ物の成分を知り、栄養学的知見が広がることにより、本書が読者の皆様の健康維持の一助となれば望外の喜びです。

目次

1章 植物

はじめに/ 光合成/ シアノバクテリア/ 植物プランクトンと海藻/ 微細藻類と海や湖の色/ アオコと赤潮/ 光合成産物の行方/ 生物における酸素の役割/ 植物の色/ アントシアニンの色の変化/ 参考文献

 

2章 穀類

はじめに/ 生物の分類と学名/ コメ①イネの歴史②精米③コメの生産地④ご飯の粘り/ コムギ①コムギの歴史②コムギの生産地③小麦粉④パンの作り方/ トウモロコシ①トウモロコシの歴史②トウモロコシの種類と利用③トウモロコシの生産地/ オオムギ①オオムギの歴史と種類②オオムギの生産地/ モロコシ/ エンバク/ ライムギ/ アワ・キビ・ヒエ/ 擬穀類①アマランサス②キヌア③ソバ/ 食物繊維/ 保健機能食品/ 食物アレルギー/ 参考文献

 

3章 豆類

はじめに/ 窒素固定/ ダイズ/ ラッカセイ/ アズキ/ ササゲ/ インゲンマメ/ ヒヨコマメ/ エンドウ/ キマメ/ レンズマメ/ ソラマメ/ ルーピンマメ/ 参考文献

 

4章 植物油

はじめに/ 植物油の主成分/ パーム油・パーム核油/ WWFとRSPO認証/ 大豆油/ 菜種油/ ヒマワリ油/ ピーナッツ油/ 綿実油/ ヤシ油/ オリーブ油/ コーン油/ 米油/ ゴマ油/ 紅花油/ エゴマ油/ アマ二油/ サラダ油/ マーガリン/ 参考文献

 

5章 野菜

はじめに/ 野菜の分類/ イモ類①ジャガイモ②キャッサバ③サツマイモ④ヤムイモ⑤タロイモ/ コンニャクイモ/ レンコン/ ユリ根/ キク科の根菜類①キクイモ②ヤーコン③ゴボウ④チコリ/ キク科の葉菜類①レタス②シュンギク③フキ④食用菊/ ネギ属の根菜類①ニンニク②ラッキョウ③タマネギ/ ネギ属の葉菜類①ネギ②ニラ/ アスパラガス/ ナス科の野菜①ナス②トマト③トウガラシ・ピーマン・パプリカ/ アブラナ科の野菜①カブ・ハクサイ類②キャベツ類③カラシナ類④セイヨウアブラナ類⑤ダイコンとハツカダイコン⑥ワサビ⑦セイヨウワサビ⑧オランダカラシ/ アブラナ科根菜類・葉菜類の辛味/ ナデシコ目の野菜①ビートの進化②ホウレンソウ③アマランサス④ツルムラサキ/ ウリ科の野菜①キュウリ②シロウリ③ヒョウタン④ユウガオ⑤トウガン⑥カボチャ⑦ズッキーニ⑧ニガウリ⑨ヘチマ/ セリ目の野菜①セリ②ミツバ③ニンジン④パセリ⑤セロリ⑥オタネニンジン⑦ウド⑧タラの芽/ ショウガ科の野菜①ショウガ②ミョウガ③ウコン/ オクラ/ シソ/ タケノコ/ コショウ/ サンショウ/ 褐変反応/ 参考文献

 

6章 果物

はじめに/ ビタミンCと壊血病/ ビタミンの発見/ 果実的野菜①メロン②スイカ③バナナ④パイナップル/ バラ目の果物①イチゴ②ラズベリー・ブラックベリー③モモ④スモモ⑤プルーン⑥アンズ⑦ウメ⑧サクランボ⑨ナシ⑩リンゴ⑪ビワ⑫イチジク/ バラ科果物の青酸配糖体/ ムクロジ目の果物①マンダリン②ポメロ③シトロン④パペダ⑤キンカン⑥イヨカン・シラヌイ⑦オレンジ⑧グレープフルーツ⑨レモン⑩ライム⑪ベルガモット⑫ユズ・スダチ・カボス⑬ライチー⑭マンゴー/ 柑橘類に特有の成分/ ツツジ目の果物①カキ②ブルーベリー③ビルベリー④ハックルベリー⑤クランベリー⑥キウイフルーツ/ ブドウ/ スグリ/ パパイア/ アボカド/ 参考文献

 

7章 甘味料

はじめに/ 砂糖/ 蜂蜜/ シロップ①メープルシロップ②アガベシロップ③コーンシロップ・異性化液糖④ソルガムシロップ/ グリセミックインデックス(GI)/ 甘味物質と甘味度①糖②糖アルコール③テルペン配糖体④甘味タンパク質⑤人工甘味料/ 参考文献

 

8章 嗜好飲料
はじめに/ 茶①緑茶の歴史②紅茶の歴史③茶の産地④茶の成分⑤紅茶の水色⑥ウーロン茶/ コーヒー①コーヒーの歴史②アラビカ種とロブスタ種の違い③コーヒー豆の産地④コーヒーの成分/ ココア①ココアとチョコレートの歴史②カカオ豆の産地③ココアの成分/ 参考文献

9章 畜産物
はじめに/ 反芻動物/ 家畜と地球温暖化/ ウシ科の家畜/ ヒツジ/ ヤギ/ ウシ①世界のウシ②日本のウシ/ スイギュウ/ ラクダ科の家畜/ ラクダ/ ラマ・アルパカ/ トナカイ/ ブタ/ ウマ属の家畜/ ウマ①世界のウマ②日本のウマ/ ロバ/ 食肉/ 乳と乳製品①乳成分②生乳と牛乳③乳糖不耐症④乳製品とは?⑤クリーム⑥バター⑦チーズ⑧全粉乳⑨脱脂粉乳⑩発酵乳⑪プロバイオティクスとプレバイオティクス/ 家禽/ ニワトリ/ ウズラ/ シチメンチョウ/ アヒル/ ガチョウ/ 鶏卵/ 肉類の鉄分/ ゼラチンと煮凝り/ ミツバチ①ミツバチの生態②蜂蜜③ローヤルゼリー④蜜ロウ⑤プロポリス/ 参考文献

10章 水産物
はじめに/ 世界の漁業と養殖業/ MSC・ASC認証/ 海藻①緑藻②褐藻③紅藻/ クジラ/ スズキ目の魚①スズキ・タイ・オオニベ類②ブリ・スギ類③ティラピア④アジ⑤サバ科の魚⑥カジキ⑦ブラックバス⑧ハタハタ/ サケ科の魚①シロザケ②ベニザケ③クニマス④ギンザケ⑤カラフトマス⑥ニジマス⑦サクラマス⑧マスノスケ⑨タイセイヨウサケ⑩イワナ・オショロコマ⑪イトウ/ カレイ目の魚①カレイ類②ヒラメ類③シタビラメ類/ タラ目の魚①タラ科の魚②メルルーサ科の魚③マクルロヌス科の魚④チコダラ科の魚/ ニシン目の魚①ニシン科の魚②ウルメイワシ科の魚③カタクチイワシ科の魚/ キュウリウオ目の魚①アユ②シシャモ・カラフトシシャモ③チカ・ワカサギ④シラウオ・イシカワシラウオ/ ウナギ目の魚①ウナギ②アナゴ③ハモ/ ダツ目の魚①サンマ②トビウオ③サヨリ④ダツ⑤メダカ/ カサゴ目の魚①アイナメ科の魚②オコゼ③カジカ④ギンダラ⑤コチ⑥メバル科の魚/ フグ目の魚①フグ②フグ毒③ハリセンボン④マンボウ⑤カワハギ⑥ハコフグ/ コイ目の魚①コイ②中国四大家魚③三大インドゴイ④フナ⑤ウグイ⑥ハス・オイカワ⑦ドジョウ/ ナマズ目の魚①ナマズ科の魚②パンガシウス③ヒレナマズ④ギギ⑤チャネルキャットフィッシュ/ チョウザメ①チョウザメ属の魚②ダウリアチョウザメ属の魚③ショベルノーズチョウザメ④ヘラチョウザメ⑤チョウザメの養殖⑥キャビア/ サメ・エイ①サメ②エイ③サメ・エイの繁殖方法/ ホヤ/ ウニ・ナマコ①ウニ②ナマコ/ 二枚貝①マルスダレガイ目の二枚貝②ホタテガイ類③カキ④イガイ類・タイラギ⑤アカガイ類/ 巻貝①アワビ②サザエ③ツブ④エスカルゴ/ 貝毒/ イカ①ツツイカ類②コウイカ類③ダンゴイカ類/ タコ①マダコ②イイダコ③コツブイイダコ④ヤナギダコ⑤テナガダコ⑥ミズダコ/ エビ①クルマエビ科のエビ②アルゼンチンアカエビ③サクラエビ科のエビ④テナガエビ科のエビ⑤タラバエビ科のエビ⑥アカザエビ科のエビ⑦イセエビ科のエビ⑧セミエビ科のエビ⑨ザリガニ/ カニ①ケセンガニ科のカニ②ガザミ科のカニ③モクズガニ科のカニ④サワガニ⑤クリガニ科のカニ⑥タラバガニ科のカニ/ キチン・キトサン/ 魚介類に含まれるアスタキサンチン/ 魚介類の鉄分/ ω3およびω6脂肪酸/ ビタミンDと骨粗鬆症/ 魚介類から感染する寄生虫症①横川吸虫②アニサキス③旋尾線虫④肺吸虫⑤クドア/ 参考文献

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