枕石漱流

第7章 十和田市の名水

はじめに

 十和田市には、「白上の湧水」、「沼袋の名水」、「桂水大明神の水」、「キッコイジャの水」、「落人の里の水」とよばれる名水が湧き出ています。また、向切田古川(明神堰)の湧水は、サケマス孵化場に利用されています。

1.白上の名水

 十和田市相坂白上では、豊富な地下水が湧き出ています(写真7-1-1)。青森県産業技術センター内水面研究所(写真7-1-2)は、この豊富な湧水を利用して(写真7-1-3)、内水面(湖沼・河川)に生息するサケ、ニジマス、サクラマス、ヒメマス、ヤマトシジミなどの水産生物の育種・増殖・養殖などの研究が行なわれています。研究所では大変珍しいアルビノニジマスが飼育されています。

 淡水養殖の大型ニジマス「青い森紅(くれない)サーモン」は、内水面研究所で10年以上の歳月をかけて開発されました。青森県の環境に適応した青森系ニジマスを雌親、魚体が大きく育つ海水耐性系ドナルドソンニジマスを雄親として2015年に誕生しました。青森県産リンゴやニンニク入りの餌が与えられ、体重2kg以上の大型に育ちます。2020年に市場デビューを果たしています。通年での水揚げが可能で、生食用として非凍結で出荷されています。

写真7-1-1 白上の湧水
写真7-1-2 内水面研究所
写真7-1-3 内水面研究所の水源池

2.沼袋の名水

 第5章奥入瀬川水系の疏水「11.赤沼堰」で述べたように、赤沼沼袋(ぬまぶくろ)を含む一帯は、江戸時代早期に赤沼堰が開削されて稲作が行なわれており、何より豊富な湧水を飲み水として利用できたので、人が生活するには大変適した場所であったと推察されます(写真7-2-1、7-2-2)。沼袋の名水は、環境省の「平成の名水百選」に選ばれており、沼袋名水公園として整備されています(写真7-2-3)。

 現在は、沼袋養魚場において豊富な湧水を利用して、ニジマスや上述した「青い森紅サーモン」などの養殖が行なわれています。

写真7-2-1 沼袋の名水の立て看板
写真7-2-2 大沼神社
写真7-2-3 沼袋名水公園の「赤沼の跡」

3.桂水大明神の水

 深持後平には気比(けひ)神社と桂水大明神の社が隣接して建っています(写真7-3-1)。桂水大明神の水は、その裏手に湧き出ています(写真7-3-27-3-3)。16世紀後半にこの湧水が身体によい秘薬だといわれるようになり、爾来人々が住むようになったといわれています。

写真7-3-1 桂水大明神(左)と気比神社(右)
写真7-3-2 桂水大明神の水の立て看板
写真7-3-3 桂水大明神の水

4.キッコイジャの水

 キッコイジャの水は沢田蒼前平の稲荷神社そばに湧き出ています(写真7-4-17-4-2)。キッコイジャのジャは沢の方言で、キッコイは「日本書紀」の異伝に出てくる菊理媛(きくりひめ)が訛って伝えられたといわれています(写真7-4-3)。

写真7-4-1 キッコイジャの水
写真7-4-2 キッコイジャの水
写真7-4-3 キッコイジャの水の立て看板

5.落人の里の水

 深持舟沢にある梅集落は、かつて戦いに敗れた武士が逃げ落ち、住み着いたところであると伝えられています。そこに湧き出る水を、村人は「カドの水」とよんでいますが、歴史的な背景から「落人の里の水」として知られるようになったようです(写真7-5-1)。湧水は2カ所に見られ、「西のカドの水」(写真7-5-2)並びに「東のカドの水」(写真7-5-3)とよばれています。

写真7-5-1 落人の里の水の立て看板
写真7-5-2 西のカドの水
写真7-5-3 東のカドの水

6.向切田古川(明神堰)の湧水

 切田上川原(向切田)には、三本木原台地から豊富な水が湧き出て、向切田古川(明神堰)の源流となっています(写真7-6-17-6-2)。この川は切田上川原の北縁を南東に流れ(写真7-6-3)、切田岩ノ上で分水します。一部は用水路として切田向切田や下川原などを流れ、残りは第5章奥入瀬川水系の疏水で述べた大光寺堰に流入します。明神堰の清水は、奥入瀬川鮭鱒増殖漁業協同組合の切田孵化場で利用されています(写真7-6-4)。

写真7-6-1 向切田古川(明神堰)の源流となる湧水
写真7-6-2 源流付近に立てられた明神堰自然保護の看板
写真7-6-3 明神堰上流
写真7-6-4 明神堰に隣接する切田孵化場

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